感想『経験論から言語哲学へ』

    ウィトゲンシュタインがやりたくて取った科目。 
 経験論っていうと唯物論、イギリス的、功利的ってイメージが強かったけど実はいろいろ複雑なんだぜっていうのが学べる科目。

 けっこうムズいです。そこはやっぱり専門科目。
 マイナー哲学者の出番も多いし、なんかみんな言ってること一緒な感じで混乱する……
 テキストもやや厚めで、一章読むのに二時間くらいかかるなんてこともありました。特に前半が重い。
 まあ『ドイツ哲学の系譜』に比べれば(略)

 ウィトゲンシュタインは、現代ではややオシャレ哲学と化してる先入観が勝手にあったんだけど(彼のアフォリズムが一人歩きしてるからかなあ)、やってみると、あ、こんなもんなんだ、みたいな印象。意外とさっぱり味。論考だけで彼を分かった気になるのは怖いですね。

    ウィトゲンシュタインとは関係ないけど、相対主義を意識しすぎることが相対性の絶対性を招く認識論的ニヒリズムとか、全体主義を掲げることがかえって「全体性の外と内」の意味合いを内包してしまうとか、哲学科目ならではのやりとりも面白い。錯覚論法への批判も容赦なくて笑う。

    論理実証主義(哲学に科学的な実証性をもとめる)の考え方には賛同できる点が多いのだけど、哲学史のなかだと雑魚キャラ扱いなのが残念だなあ。最終的にウィトゲンシュタインからも見離されてるし。歴史というものは1人のスターを求めてしまいがちですね。

 

 試験は持込み可。
 対策は他の哲学科目と同じでテキストの読み込みに尽きると思う。ドイツ哲学と違って、読むことすらできないってことはない……
 けど丁寧に、一つずつ、ゆっくり噛み砕いていかないと表層的な理解に終わってしまいそうな科目です。僕は見事に、点取りのための勉強に留まってしまいました。
 穴埋めが多いので、正直、教科書めくってれば解けてしまう問も多い。

感想『世界文学への招待』

 放大の西洋文学科目を支える宮下先生、

 小説家の小野正嗣氏、
 この二人がタッグで主任講師という夢膨らむ科目。

 でも割と、ふつーの文学科目だったかなという印象。
 そりゃまあ大学ですしね。

 『世界文学』とはいえ、ドストエフスキートルストイフローベールといったお約束の人たちはお休み。
 それよりも20世紀以降に活躍してきた現代寄りの作家が取り上げられる。その意味では、よくある文学史を越えた良い授業といえるでしょう。

 アラブ文学とかアフリカ文学とか、そうそう講義してもらえるものじゃないよなあ、というのはひしひし伝わってきます。外国人の日本文学研究者に源氏物語を語られるというのもかなり新しい体験。ドナルド・キーンの話を聞いてるみたいでなんかうれしいよね。

 難点は、世間的には知名度低めな作家と作品が次々に出て来ては流れていくから、あんまり印象に残らないことかなあ。読んでみたいなーと思う作品もいくつかあったけど、どれも長そうだし重そうだし、いやな考え方だけど、いわるゆ世界古典文学にある『ブランド性』も薄くて手が出しにくい。これだけ多くの作品が取り上げられて、実際に読めたのがカナファーニー『悲しいオレンジの実る土地』だけだというのがまた悲しい……

 特にキツいのは韓国・朝鮮文学のところ。完全に学校の教科書と化していて、読むだけでも精一杯だった。放送授業ではハングルと日本語の入り交じってるところを聞かせてくれて面白いんだけど……。

 新しい文学の勉強がしたい人には向いてる。
 知識としての文学教養がほしい、って人にはいまいちかなあ。

 テストは択一式で、持ち込みは……

 もともと可能だと思ってたら、試験一週間前に過去問やろうとしたところ「不可」になってることに気づく。しかも問題は結構難しい……というかイヤらしい(聞いてくるところが細かい)つくりで6〜7割しか取れない……

 って泣いてたら今年度から持込み可に変わってました。(苦情多かったんだろうな)
 持込み可になったことで設問の難易度いっきに跳ね上がるかなあとも思ったけど、そこまで難化という感じはせず。
 平成28年度開設科目だから、やっぱり開設直後に履修するってリスキーだね……

 正答を判別できるポイントが本当に細かいので、暗記嫌いな僕はけっきょく教科書漁りまくる試験でした。もっとまじめにやれば面白い科目だったんだろうけどなあ。
 文学のエコロジーよりは難しいと思います。

感想『日本語リテラシー』

日本語リテラシーの部屋へようこそ。

ついにとってしまった放大名物パペット科目。
どこぞの教育テレビのような雰囲気のなか、なごやかと殺伐をあわせ持ちながら授業は進む。

要は講師・人形の対話形式テレビ授業ってことです。
基礎科目の音楽が懐かしい。

大学のレポートを書くことに特化した実用的な日本語の授業。
あくまでも『実用的な日本語』のため、芸術的な要素は極力はぶかれる。
詩とか小説とか好きだから日本語勉強したいな〜、という人には向かなかも。

この授業うけて、そりゃ記述試験でA○とれないわけだよと反省。

マーくんの自信満々に書いた文章が先生に全否定されるというシーン多数で悲しい。
でも終盤には成長してたね、マーくん。

放送授業では街中で見かける変な日本語、といったコラムがある。
面白いけど、こうやって看板をiPadで撮ってる言語学者がいたら嫌だなあ……。

助詞「は」「が」の役割の違い。
帰納と演繹のことなど、
ずっと知りたかったことが知られたのが一番の収穫。

試験は持込可。
過去問からの使い回しも数問あり。
「印刷教材と放送授業の内容に合致したものを〜」という設問の作り方だけど、基本テキストに答えのあるものが出題されるので、そんなに恐れることはない。

ただし、「授業の内容に合致してるもの」なので、一般的に言って正しそうなものがひっかけ選択肢になってたりするので、要注意。

「"焼酎は芋が好きだ"は、焼酎のつまみには芋が合うという意味である」っていう問題が出て、きっとサービス問題だったんだろうけど逆にたじろいだよ……

あー!ちょっとちょっと!
もう時間ですよ先生!!

2015年度後期科目感想

【日本文学概論】
島内先生の純文学的表現を苦笑いしながら楽しむ科目。ただの暗記文学史ではなく、より広い視点から概観できる授業構成はなかなかのもの。著名な文学者の多面的な業績が知れる。

 

【心理と教育を学ぶために】
基礎科目だけど意外と学術的で手こずる。正直いうと『教育心理の巨人』のが面白かった(まああれはお楽しみ科目みたいな感じだけど)。今後本格的に心理教育をやる人にとっては良い基盤となるだろう。試験は一発アウト暗記系の問題がちらほらあって狼狽する。

 

【実存と現象学の哲学】
浅く広くではなく一点集中、人と人との真の出会いの可能性だけを哲学的に問い続ける the 専門科目。結局のところ出会いは可能、という結論に落ち着くがその過程はあまりに煩雑。試験はこなせたけど本質は1割も理解できてる気がしない。脳科学をボロクソに言う。

 

【死生学入門】
勉強してることを話すと何か悩みでもあるのかと心配される科目。今期の癒し授業。分かりやすいし楽しかった〜。ただ内容はお年寄り and 医療系学生向け。第3章日本人の死生観が個人的ベストヒット。ちょくちょく千の風になってが流れる。

 

【西洋哲学の誕生】
難易度インフェルノ。神学への興味がないまま履修した者には必ずや天の裁きが降るだろう。試験はマーク・記述併用と鬼畜型。時間足りねーよ。とても共通科目のレベルではない。それだけに一番頑張った科目なので、詳細に

[1〜6:古代ギリシア

素直な哲学史ソクラテスプラトンアリストテレスが中心。それ以外の哲学者はあっさり。試験問題が暗記系に偏っているのは楽と見るか、つまらないと見るか。ソクラテスの暴走っぷりが知れて面白い。



[7〜10:ヘブライズム]
東大院より招かれし客員教授の容赦ない猛攻が始まる。旧新約聖書の哲学的解釈を学ぶのだが、専門的すぎっすよマジで。てか参考文献読んだけど教授の著書からの転用じゃねーか! とはいえ最高峰学術機関の授業が受けれたというのは万感の思いでもある。



[11〜14:ヘレニズム〜]
ヘブライズムの関所を超え、やっと純粋な哲学だ! と歓喜する学生を谷へ突き落とす最終部。そこかしこに「神への愛」「神を志向する」「キリストの受肉」みたいな言葉があふれていて頭を抱える。授業はテキスト音読なので携帯機器に入れてのながら勉強が捗る。

2015年度前期科目感想

【世界の名作を読む】
作品の魅力を学び、朗読を聴くだけのお手軽科目。なのにしんどかった記憶が多いのは全作品通読なんて変な縛りを設けたから。でもやって良かったと思う。でないと罪と罰には一生取り組めなかった。楽しい授業だったな。残る寂寥感。

【教育と心理の巨人たち】
内容は易しく面白く、飽きもこないという好い事尽くしの科目。やはり個人的にはフロイトがベストヒット。エリクソンの概念にも出会えて良かった。教育の分野には興味なかったけどそれでも楽しめたのは講義のお陰。

【英文法AtoZ】
序盤の過去形なんかは最高に懐かしく、終盤の構文を覚える頃にはだるくなっている。中学〜高校の記憶を呼び覚ましてくるノスタルジックな科目。予習・受講・復習がさっと終わるのでボーナスステージのよう。この科目とってなかったら破綻してた。でも試験対策には一番時間を割いた。

【哲学へのいざない】
一番の曲者。教科書の意味が分からず、放送授業に助けを求めると教科書丸読みという殺生な科目。そのくせ試験は平易で肩透かし。と文句ばかり垂れているが、理解できた瞬間には強烈な精神的絶頂に達することができる。飴と鞭の乱打。そして後期も懲りずに哲学へ挑む……

感想『文学のエコロジー』

 文学のエコロジー
 略して文エコ。

 総合科目なので内容は法律・経済にも及ぶ。が、まあほとんど人文科目といっていいでしょう。
 宮下先生の授業がどれも面白い。白話小説の話も興味深いが、12章は完全にただの歴史の教科書になってしまっていてあんまり……

 舞台は主に古代〜中世フランス。
 口承が文字になり、写本が活版になり、買取性が印税に……といった文学をとりまく時代ごとの文化を学ぶ。
 文学好きホイホイな科目。


 試験は教科書・ノート持込み可。
 この科目とってもおもしろいのだけど、私事をいうと……
 正直、講義は難しくないし持込み可だし、タカをくくってあまり対策していませんでした。
 そのうえセンターに向かう途中、「一応もういっかい過去問見直しとくかー」と教科書を開くと、
 過去問2回分やってないことがそこで判明。
 しかも思ったより難しくて全然解けない。

 時間いっぱい教科書を引きまくる試験になりました。A〇はキツいかなあ……。問題は素直なものが多いと思います。過去問と同じものもあり。

感想『ドイツ哲学の系譜』

 この科目の扉を開いたが最後、必ずや君は未知なる世界へと足を踏み入れ、そしてすごすごと引き返してくることだろう。

 むっずい。クソむっずい。
 今期ボスは間違いなくこの科目である。「ドイツ哲学ってちょっとおもしろそ〜」くらいの動機の奴。Welcome to inferno.

 この科目を一言で言い表せばこんな感じだ。

 受講前「ドイツ哲学って観念論でしょ」
 受講後「ドイツ哲学……? 観念論……?」

 まさに無知を知るにはふさわしい科目。
 要は意味不明ってことだ!

 面接授業で会った人に「わたし芸術の分野興味あるからドイツ哲学もやってみたいんですよね〜」と言われて僕は苦笑いすることしかできなかった。

 ショーペンハウアーニーチェを担当する湯浅先生だけが理解できる難易度で話してくれる(それでも易しくはない)。ニーチェのいうニヒリズムの意味や、永遠回帰説について咀嚼できたのはうれしい。

 教科書の難しさは『西洋哲学の誕生』に匹敵。『西洋〜』はヘブライズム以降が地獄だったが、『ドイツ〜』は湯浅先生をのぞく3人の分担講師、計10章が地獄といっていいだろう。
 正直ぼくは山田先生のヘブンリイな言語(婉曲)にすっかり打ちのめされて哲学する自信を失っております。終盤には教科書ひらくだけで拒否反応でるようになってた。

 ってか最終章のシンポジウムで佐藤先生がひたすら苦笑してたのが忘れられない。アンタに分からなかったら俺らにも分からんわ!!


 試験は教科書・ノート・国語辞典が持込み可。
 過去問の使回しなし。テキストにそのまんま書いてあるような問題なし。意味をかみ砕いて理解しないと選べない選択肢たち。講師陣やる気ありすぎである。良い問題です……
 択一式だけど30分退席するには相当教科書を読み込んでおかないと厳しいのではないか(この教科書を読み込むのがそもそも厳しいという問題もある)。僕のセンターも10人くらい受験してたけど、途中退室したのは1人だけだった気がする。というか下手したら時間切れもあり得る。「残り5分です」と言われたとき、「ああ……」と絶望の声を漏らしたおじさんがいた。

 国語辞典は僕は用意しませんでした。持ってないしどうせ電子辞書はダメって言われると思ったし。許可物品に載ってる理由がいまいちわからない。使われる単語が難しいからかな。でも哲学用語なんて国語辞書に載ってないことが多いし、引く暇があるなら教科書の索引さがしたほうがはやいと思う。

 哲学専攻を意欲する人なら避けては通れない科目。カントの『純粋理性批判』をすらすら読めたら天才、というのを聞いたことがあるけれど、この教科書もまあそんなところだろう。君の潜在能力が問われる。