2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ドイツ哲学の系譜 第4章

判断力批判 そもそもなぜカントは三批判書を書いたのかさえおぼつかないのだけど、その中でもこの『判断力批判』はなぜ書かれたのか特に分からない。『純粋理性批判』ではアプリオリな綜合判断は如何にして可能かが説かれて、そこで二律背反に終わった問題が…

文学のエコロジー 第4章

ルネサンス人の読書 黙読が可能になったことにより読書の現場はプライベートな領域へと移っていく。 登山に本を持って行き、アウスグティヌスの言葉に感銘を受けたペトラルカ。没落先でも読書に耽って野心を燃やしたマキャベリ。自宅の中でもウロウロ、引き…

日本の物語文学 第3章

伊勢物語1 伊勢物語ってなんだっけ。 紀貫之が作者……? あ、それは土佐日記か、ってレベル(ガチです) どうやら源氏物語の前身となるハーレム物らしい。冒頭文は、 むかし、男、初冠して、平城の京春日の里にしるよしして、狩にいにけり。 やべえ、全然知ら…

心理臨床の基礎 第3章

ライフサイクル理論その2 人生後半の意義について 前回はフロイトとエリクソンのライフサイクル理論をやった。フロイトは幼少期を、エリクソンは青年期を重要視したわけであるが、今回は人生後半も意義深いとしたユングとレヴィンソンについて。 ユングは人…

ドイツ哲学の系譜 第3章

『実践理性批判』とその前後『基礎づけ』と『永遠平和のために』について 一文たりとも理解できないカントの中でも唯一理解できそうな『実践理性批判』。その理由はといえば、定言命法の部分が意外にすっきりした形をとっているからだろう。 カントは、他の…

文学のエコロジー 第2章

前回見たように、かつての文学は口承芸能であり、音の本領を発揮する演芸の場でこそ真骨頂が見られたのであるが、徐々に文学は「文字」を基盤とする体制へと姿を変えてゆく。 1 中世の読書 中世のキリスト教社会において読書といえば、それは聖なる営み(修…

日本の物語文学 第2章

1 竹取物語にみる物語の如意宝 日本最古の物語にはたくさんの「宝物(=如意宝)」が現れる。これはその後に隆盛する物語ジャンルの特性である。物語、及び物語の登場人物たちはこの如意宝を掴んだり失ったりして話型は展開する。 話型とは「登場人物の人生…

心理臨床の基礎 第2章

1 ライフサイクル ライフサイクルという用語の歴史はエリクソンに始まる。 レヴィンソンによればこの言葉は「出発点(誕生)から終了点(死亡)までの過程の旅」「一連の時期を『段階』に分けて捉える『四季』」としての2つの意味がある。人生の各時期には…

ドイツ哲学の系譜 第2章

1 『純粋理性批判』の前に 『純粋理性批判』の構想に達する前のカントを前批判期、以後を批判期と呼んで区別する。前批判期のカントは自然科学に関心を寄せていたと見ることができる。 「批判」……あらゆる経験に依存せずに、認識できるものとできないものを…

文学のエコロジー 第1章

1 導入 かつての口承文学の時代において著作権などというものはなく、現代に伝わる古代の作品は様々な写本を学者が校訂したものであり、決してオリジナルのテキストを読んでいるわけではない(このへんはこれまでの文学科目でも常々味わったから問題なく納…

心理臨床の基礎 第1章

1 (1)心理療法 心理療法は人間の負の側面を扱う故に危険を伴うものであり、熱意や親切心とは異なった専門性が求められる。また実際的訓練を受けていることも必要。クライエントが自分独自の解決を見いだす援助をするものであり、「じゃあ、こうしたみた…

ドイツ哲学の系譜 第1章

1 ドイツ哲学とは何か そもそも「ドイツ」とは何か。意外にも「ドイツ」とは不分明なものである。例えばドイツ哲学の代表者であるカントが生涯を送った街ケーニスベルクがこんにちはドイツでないこと等…… 「ドイツ王国」という言葉が公式に用いられるのはヴ…

日本の物語文学 第1章

1 物語とは何か 真実と虚構が融合したもの。例えば源氏物語は、歴史的事実に準拠しながら虚構を織り交ぜてつくった作品である。また、その意味では作り物語と歌物語は別個のものではない。 2 物語は何でないか(1)神話との比較 神話は現実世界の「起源」…