感想『現代の危機と哲学』
6年間に渡る大学生活のトリを飾った科目。
もう哲学はこりごりと思っているが、どうしてもこの科目だけは取りたかった。なぜならニーチェをやってないから。
古代ギリシア哲学から、デカルトに始まる近代哲学、ドイツ観念論、イギリス経験論、フランス哲学、実存哲学、現象学……とこんな回り道をしてきたのも、ちゃんと基礎を固めた上でニーチェを勉強したかったからなのであった。
神の死についての解釈は、かなり森教授流になっている気がしなくもない。
本当は超人思想や永劫回帰とかもがっつりやりたかったけど、このテキストでの比重はやや軽め。まああとは自習的に学ぶしかあるまい。
ニーチェの後は、ハイデガーとハンナ・アーレントがこの科目のメインです。
ハイデガーは他で勉強する機会があったので「存在」と「時間」って単語を見るだけでウッ、頭が……って感じなんですが、
何章も費やして吟味されるテキストが、まさかの学長就任演説という、これまでの哲学の教科書でこんなのあったのでしょうか。
ナチズムへの加担と、アーレント編につなぐと言う側面で、この教材向きだったということか。
ハンナ・アーレントは恥ずかしながら知らない人でした。(一瞬フロイトの娘かと)
労働・制作・行為を明確に区別する理屈は、個人的にはあまり賛同できなかったのですが、古来哲学の重要なキーワードである人間の「可死性」の対しての、「出生性」という概念は最近ぼんやり考えていたこととマッチして、非常に私好みでした。
世界大戦、無差別テロ、原発事故等等、
(そして教材には遅れて起きた昨今の感染症ももちろん含めて)
現代には危機が跋扈しており、人類にこれだけ「世界はいつか終わる」というセカオワ思想が蔓延しているのに、なかなかどうして世界は終わらない。何故か?
そこに「出生性」があると、アーレント(森教授)は答える。興味のある方は、ぜひ受講してみては。
……と、いろいろ楽しんで取り組んだ本科目だが、自宅受験だと思うと結局試験対策はせず。
2〜3日かけて丁寧に教科書を読み解きながらの受験となりました。
もともと、持込禁止だったような。それだと結構キツかったかかもな。。