文学のエコロジー 第4章

ルネサンス人の読書


 黙読が可能になったことにより読書の現場はプライベートな領域へと移っていく。

 登山に本を持って行き、アウスグティヌスの言葉に感銘を受けたペトラルカ。没落先でも読書に耽って野心を燃やしたマキャベリ。自宅の中でもウロウロ、引きこもる場所と動く場を分けていたモンテーニュ

 

 この章の大きなポイントは、内と外。

    自分の観念の内と外。自分の家の内と外。あるいは政治的空間の内と外。先にあげた三人はこの内と外を往来しつつ、そこに読書を絡めて生きた人物である。読書が個人的な領域に移ることで内と外の分割、そしてその相互作用が可能になったということか。

    たとえばペトラルカは山の頂上で風景を見ながら郷愁にふけっている間、持ってきた本を読んで「またお前は外の世界ばかりに気をとられているな、もう少し自分を振り返って見ろ!」と言われて愕然とするわけだけど、ここでは人間の思考の内と外をつなぐ役目としての読書が語られている。そしてこの読書の仕方は、かつての中世僧院で物静かに神の言葉を「味読」していたのとは一線を画した、心身の自由な営みである。

 

 まあ俺はもう二度とアウグスティヌスなんて勉強したくないと思っているわけだけど……