心理臨床の基礎 第2章

1 ライフサイクル
 ライフサイクルという用語の歴史はエリクソンに始まる。
 レヴィンソンによればこの言葉は「出発点(誕生)から終了点(死亡)までの過程の旅」「一連の時期を『段階』に分けて捉える『四季』」としての2つの意味がある。人生の各時期には特有の問題が生じることから、これらの視点は重要である。
 ライフサイクルという用語が使われるようになった背景には①寿命が長くなったこと、②中年期以降の個性化の意義が問われるようになったこと、があげられる。

 

2 フロイトの精神性的発達段階論
 フロイトは、神経症は無意識に固着していたリビドー(性的欲動)を開放することで治癒されると考えた。そしてそのリビドーの在処を幼児期の親子関係に求めた。
 ただしこの理論は、成人神経症患者の治療の中から見出した理論であり、実際の観察に基づいたものではない。
 事実、この理論を実証しようと半世紀後に夥しい研究が行われたが、一貫した結果を得ることはなかった。

 

3 エリクソンのライフサイクル論
 エリクソンはこの発達理論を社会的・文化的な文脈で捉え直す&青年期を重視し、自らの価値選択によって自分をいかに形づくっていくかという過程が重要とした。青年期までを4段階、それ以後を4段階、計8段階に区分した。
 なお、エリクソンは女性のライフサイクル論にも論及しており、女性の身体構造「子宮」に着目した。女性な「内的空間」の成立が、女性のアイデンティティ形成にとって重要であるとしたのである。
 女性のアイデンティティのうちいくらかは、配偶者となる男性や子供のために開かれていて、内的空間に歓迎するものの選択が可能になったとき、女子青年のモラトリアムは終結するんだって。もっとも現代では、男性も女性も同様のライフサイクルとみる研究者が多いようだけども。

 


 女性のライフサイクル論は現代の独身女性が聞いたら激憤しそうな話である。でも、ほら! 「歓迎するものの『選択』が可能になったとき」って言ってるから! 選択できてれば問題ないから!