感想『経験論から言語哲学へ』

ウィトゲンシュタインがやりたくて取った科目。 経験論っていうと唯物論、イギリス的、功利的ってイメージが強かったけど実はいろいろ複雑なんだぜっていうのが学べる科目。 けっこうムズいです。そこはやっぱり専門科目。 マイナー哲学者の出番も多いし、な…

感想『世界文学への招待』

放大の西洋文学科目を支える宮下先生、 小説家の小野正嗣氏、 この二人がタッグで主任講師という夢膨らむ科目。 でも割と、ふつーの文学科目だったかなという印象。 そりゃまあ大学ですしね。 『世界文学』とはいえ、ドストエフスキー、トルストイ、フローベ…

感想『日本語リテラシー』

日本語リテラシーの部屋へようこそ。 ついにとってしまった放大名物パペット科目。どこぞの教育テレビのような雰囲気のなか、なごやかと殺伐をあわせ持ちながら授業は進む。 要は講師・人形の対話形式テレビ授業ってことです。基礎科目の音楽が懐かしい。 大…

2015年度後期科目感想

【日本文学概論】島内先生の純文学的表現を苦笑いしながら楽しむ科目。ただの暗記文学史ではなく、より広い視点から概観できる授業構成はなかなかのもの。著名な文学者の多面的な業績が知れる。 【心理と教育を学ぶために】基礎科目だけど意外と学術的で手こ…

2015年度前期科目感想

【世界の名作を読む】 作品の魅力を学び、朗読を聴くだけのお手軽科目。なのにしんどかった記憶が多いのは全作品通読なんて変な縛りを設けたから。でもやって良かったと思う。でないと罪と罰には一生取り組めなかった。楽しい授業だったな。残る寂寥感。 【…

感想『文学のエコロジー』

文学のエコロジー。 略して文エコ。 総合科目なので内容は法律・経済にも及ぶ。が、まあほとんど人文科目といっていいでしょう。 宮下先生の授業がどれも面白い。白話小説の話も興味深いが、12章は完全にただの歴史の教科書になってしまっていてあんまり…… …

感想『ドイツ哲学の系譜』

この科目の扉を開いたが最後、必ずや君は未知なる世界へと足を踏み入れ、そしてすごすごと引き返してくることだろう。 むっずい。クソむっずい。 今期ボスは間違いなくこの科目である。「ドイツ哲学ってちょっとおもしろそ〜」くらいの動機の奴。Welcome to …

感想『心理臨床の基礎』

臨床心理学を学び続けるコア科目。 フロイト・ユング・ロジャーズ……主要な心理臨床家に一通りふれられるし、認知行動療法や遊戯療法の回もある。ライフサイクルの講義も序盤に控えてるので、エリクソンとか興味ある人もおすすめ。 難点はひたすら理詰めなこ…

感想『日本の物語文学』

この科目でいう「物語文学」とはつまり「〇〇物語」と名のつく文学たちであり、つまりは「竹取物語」や「源氏物語」のことである。近代文学をやりたい人は回れ右。最終章もなぜか樋口一葉で締めくくられる。 島内裕子先生が主かと思いきや、前半を取り仕切る…

心理臨床の基礎 第6章

深層心理学理論 フロイトが無意識を発見したというのはさんざん習ったことだけれども、今回は意外とまだ習ってなかった「エス・自我・超自我」が登場。 【エス】無意識の奥底にあるもの。主として性的なもの(ザ・フロイト!)本能的エネルギーの源泉。サド…

ドイツ哲学の系譜 第6章

へーゲル突入 さて前章ではカントの「物自体」を否定しようとして失敗したフィヒテとシェリングを見たわけであるが、今回はこの問題を解決させたへーゲルへと進む。さあどうやって解決したのか教えてもらおうじゃないか! へーゲルによれば、 絶対者は主観と…

文学のエコロジー 第5章

著作権前史 活版印刷が始まると商売気も強くなるし、著作物と著作者がつよく結びつくようになる(口承文芸が写本のような代々語り継がれていくような形態でなくなる)。となると、問題になるのは著作権。むかしは著作権なんてものはないから海賊版や贋作も当…

日本の物語文学 第5章

前期物語の試み ざっくり言えば、源氏物語に至るまでの諸物語の画期性と失敗、といった内容。 文学は基本的に過去の名作を踏襲し、しかし少しずつ形を変えて続いていくものだから源氏物語がそれ以前の作品から取り入れている要素が多いのは当然。しかしこの…

心理臨床の基礎 第5章

学習理論・認知理論 学習理論は心理学のなかでも特に楽しい部分だよね。パブロフの犬とか。そして放送大学に入学してから「教育と心理の巨人たち」→「心理と教育を学ぶために」→「心理学概論」と何度も刷り込まれたのでいい加減におぼえました。まだ負の強化…

ドイツ哲学の系譜 第5章

フィヒテとシェリング 観念論ってのは単純に言えば「われわれが知覚できるものは、われわれ自身の感性と知性に依存している」というものだが、カントは同時に実在論をも主張した。本来その二つは相容れないものなのだが……、一方を「超越論的」観念論として、…

文学のエコロジー 第3章

中世文学とパトロン パトロンといえばルネサンス期のメディチ家が思い浮かぶが、もちろんそれ以外にもパトロンは存在した。今回はパトロンがどう中世文学を支えていたのか、というお話。 前章までの話からも分かるように、このころの文学とは写本が中心であ…

日本の物語文学 第4章

伊勢物語2 前回は伊勢物語の「愛」が焦点だったが、本章は「旅」にフィーチャー。 物語のよくある話型に『貴種流離譚』というのがあるそう。高貴な血筋の主人公が不運な事故・陰謀などで放浪の身となり、旅先で出会った人々を救ったり悪党を退治したりして…

心理臨床の基礎 第4章

精神医学 たのしいライフサイクル論の時間は終わり、今回は精神医学とかいきなりヤバそうな分野に足を踏み入れる。教科書読むと「生きていることの意味と物語」「新しい精神の科学」とか書いてあるし、なにこれ。新興宗教? 教科書は冒頭からゲノムとかニュ…

ドイツ哲学の系譜 第4章

判断力批判 そもそもなぜカントは三批判書を書いたのかさえおぼつかないのだけど、その中でもこの『判断力批判』はなぜ書かれたのか特に分からない。『純粋理性批判』ではアプリオリな綜合判断は如何にして可能かが説かれて、そこで二律背反に終わった問題が…

文学のエコロジー 第4章

ルネサンス人の読書 黙読が可能になったことにより読書の現場はプライベートな領域へと移っていく。 登山に本を持って行き、アウスグティヌスの言葉に感銘を受けたペトラルカ。没落先でも読書に耽って野心を燃やしたマキャベリ。自宅の中でもウロウロ、引き…

日本の物語文学 第3章

伊勢物語1 伊勢物語ってなんだっけ。 紀貫之が作者……? あ、それは土佐日記か、ってレベル(ガチです) どうやら源氏物語の前身となるハーレム物らしい。冒頭文は、 むかし、男、初冠して、平城の京春日の里にしるよしして、狩にいにけり。 やべえ、全然知ら…

心理臨床の基礎 第3章

ライフサイクル理論その2 人生後半の意義について 前回はフロイトとエリクソンのライフサイクル理論をやった。フロイトは幼少期を、エリクソンは青年期を重要視したわけであるが、今回は人生後半も意義深いとしたユングとレヴィンソンについて。 ユングは人…

ドイツ哲学の系譜 第3章

『実践理性批判』とその前後『基礎づけ』と『永遠平和のために』について 一文たりとも理解できないカントの中でも唯一理解できそうな『実践理性批判』。その理由はといえば、定言命法の部分が意外にすっきりした形をとっているからだろう。 カントは、他の…

文学のエコロジー 第2章

前回見たように、かつての文学は口承芸能であり、音の本領を発揮する演芸の場でこそ真骨頂が見られたのであるが、徐々に文学は「文字」を基盤とする体制へと姿を変えてゆく。 1 中世の読書 中世のキリスト教社会において読書といえば、それは聖なる営み(修…

日本の物語文学 第2章

1 竹取物語にみる物語の如意宝 日本最古の物語にはたくさんの「宝物(=如意宝)」が現れる。これはその後に隆盛する物語ジャンルの特性である。物語、及び物語の登場人物たちはこの如意宝を掴んだり失ったりして話型は展開する。 話型とは「登場人物の人生…

心理臨床の基礎 第2章

1 ライフサイクル ライフサイクルという用語の歴史はエリクソンに始まる。 レヴィンソンによればこの言葉は「出発点(誕生)から終了点(死亡)までの過程の旅」「一連の時期を『段階』に分けて捉える『四季』」としての2つの意味がある。人生の各時期には…

ドイツ哲学の系譜 第2章

1 『純粋理性批判』の前に 『純粋理性批判』の構想に達する前のカントを前批判期、以後を批判期と呼んで区別する。前批判期のカントは自然科学に関心を寄せていたと見ることができる。 「批判」……あらゆる経験に依存せずに、認識できるものとできないものを…

文学のエコロジー 第1章

1 導入 かつての口承文学の時代において著作権などというものはなく、現代に伝わる古代の作品は様々な写本を学者が校訂したものであり、決してオリジナルのテキストを読んでいるわけではない(このへんはこれまでの文学科目でも常々味わったから問題なく納…

心理臨床の基礎 第1章

1 (1)心理療法 心理療法は人間の負の側面を扱う故に危険を伴うものであり、熱意や親切心とは異なった専門性が求められる。また実際的訓練を受けていることも必要。クライエントが自分独自の解決を見いだす援助をするものであり、「じゃあ、こうしたみた…

ドイツ哲学の系譜 第1章

1 ドイツ哲学とは何か そもそも「ドイツ」とは何か。意外にも「ドイツ」とは不分明なものである。例えばドイツ哲学の代表者であるカントが生涯を送った街ケーニスベルクがこんにちはドイツでないこと等…… 「ドイツ王国」という言葉が公式に用いられるのはヴ…